ガスインジェクションの歴史(1)
いったいどんな人物が樹脂の中に空気(窒素)を注入しようなんて考えたのか、その発想と実行力に驚かされる。先人たちの豊かな発想力から、プラスチック射出成形における問題点を解決する夢のような技法が実現された。1970年代に旭化成によって考案され、1990年代に旭化成のAGIのほか、シンプレス(英)、エアーモールド(独)、ゲインテクノロジー(米)などの海外勢も入り乱れたガスインジェクション(ガスアシスト射出成形)の一大ブームとなった。その後、中国などに生産拠点が移されガスインジェクション技術も海外へと移管され、需要が激減し低迷することになる。この素晴らしい技術を開発し、世に送り出した先輩技術者たちもほとんど引退してしまった。 昨今、ガスインジェクション技術が、現代の若い開発・設計者たちから革新的な技術として蘇りはじめている。埋もれた技術をもう一度引出して、一般の射出成形では不可能な製品に挑む挑戦者たちが増えてきた。先輩たちと学び、受け継いだ技術を、事例を交えてわかりやすく紹介していこうと思う。